イザヤ書 10

1「不正な裁判官と不公平な法律を作る者は
災いである」と主は言います。
彼らは、貧しい人やみなしごを見殺しにし、
未亡人や父のない子の権利を奪っています。
「わたしが遠い国から滅亡を招き寄せる。
さあ、どうするつもりか。
そのとき、だれに助けを求めるのか。
どこに財宝を隠すつもりか。
わたしは助けない。
道は二つ。
囚人となって、よろめきながら引かれて行くか、
虐殺されて横たわるかだ。
それでもわたしの怒りは収まらない。
なお打ちのめそうと、こぶしを振り上げる。

アッシリヤへの神のさばき

5-6 アッシリヤはわたしの怒りのむちだ。
わたしはその軍事力を使って、
滅びの運命にある、不敬虔なこの国を攻め立てる。
アッシリヤはこの民を捕虜にし、
略奪をほしいままにし、泥のように踏みにじる。
ところが当のアッシリヤ王は、
わたしにあやつられているとは夢にも思わない。
世界征服の一部として、
神の民を攻めているだけだと考える。

占領した国々の王に高官たちを据え、得意げに言う。

『さあ、カルケミシュのように

カルノもやっつけてしまおう。
ハマテなど一飲みだ。
アルパデのように必ず降伏するだろう。
サマリヤもダマスコのように
足腰が立たないようにしてやろう。
10 エルサレムやサマリヤの神より偉大な神々の国を、
われわれは片っ端から打ち倒してきた。
11 サマリヤとその神を打ち砕いたように、
エルサレムとその神もそうしよう。』」

12 主はアッシリヤ王を用いて目的を果たしたのち、今度は、高ぶるアッシリヤに襲いかかって罰を加えます。

13 彼らは豪語したのです。

「われわれは自分の力と知恵で戦いに勝ってきた。
われわれは高度の文明を誇る偉大な民だ。
われわれの手で国々の城壁をぶち壊し、
住民を滅ぼし、財宝を運び出した。
14 諸国の富を略奪し、
農夫が卵を集めるように、
王国を奪い取ってきた。
彼らはわれわれを阻止するどころか、
抗議することさえできなかった。」
15 しかし主は、きびしく問い返します。
「斧は主人に、
自分のほうに力があると自慢できるだろうか。
のこぎりは、それを使う人よりほめられるだろうか。
棒は、それを動かす手がなかったら、
人を打つことができるだろうか。
杖は一人で歩くことができるだろうか。」
16 あなたのおごりのゆえにアッシリヤの王よ、
天の軍勢の主は負け知らずのあなたの軍隊に
疫病をはやらせ、兵を打ちます。
17 光であるイスラエルの聖なる神は、
燃えさかる炎となって全軍を焼き尽くします。
イスラエルの国土を荒らした、
いばらのようなアッシリヤ人を、
一夜のうちに焼き払うでしょう。
18 今は壮麗な森のような大軍も無残な姿をさらし、
病人がやせ細っていくように、
身もたましいも滅び去ります。
19 おびただしい兵力を誇った大軍のうち
生き残る者はわずかで、
子どもにも数えられるほどの数です。

イスラエルの残りの民

20 そうなってようやく、
イスラエルとユダに残っていた者は、
二度とアッシリヤ人を恐れなくなり、
イスラエルの聖なる神である主だけを
頼みとするようになります。
21 全能の神に立ち返るのです。
22 しかし今、イスラエルの民は
海辺の砂のように多くいようとも、
その時まで生き残り、神に立ち返る者は、
ごくわずかしかいません。
神はご自分の民を滅ぼそうと、
堅く覚悟を決めているからです。
23 彼らを根こそぎにすることは、
主なる神によってすでに決められたことです。

24 それゆえ主なる神は命じます。「エルサレムに住むわたしの民よ、かつてのエジプト人のようにアッシリヤ人が圧力をかけても、怖がってはならない。 25 もうしばらくの辛抱だ。わたしの怒りはおまえたちから離れ、アッシリヤ人に向けられる。彼らは滅びるのだ。」 26 全能の主は、ギデオンがオレブの岩でミデヤン軍を打ち破った時のように、またエジプト軍が海でおぼれた時のように、アッシリヤ軍に立ち向かいます。

27 その日、神はご自分の民を解放し、

奴隷のくびきをはずして粉々に壊します。
28-29 見なさい。アッシリヤの大軍が押し寄せて来ます。
さっきまでアヤテにいたのに、
もうミグロンに着きました。
彼らはミクマスに軍用物資を置き、
渡し場を過ぎ、ゲバで野営します。
ラマの町は震え上がり、
サウルの町ギブアの住民は命からがら逃げ去ります。
30 ガリムの人たちよ、
恐怖につかれて声の限り叫びなさい。
大軍がやって来るのだから、
ラユシャに大声で危険を知らせなさい。
哀れなアナトテよ、あなたの運命は何とも哀れです。
31 あそこに行くのは、
落ち伸びて行くマデメナの人たちではありませんか。
ゲビムの住民は逃げる準備をしています。
32 その日、敵軍はノブで止まり、
シオンの山の上にあるエルサレムに向けて
進軍の手を振ります。
33 しかし、あれを見なさい。
天の軍勢の主が屈強な木々を切り倒しています。
大木と小木、将校と兵卒の区別なく、
あの大軍を滅ぼし尽くしています。
34 全能の主が、きこりが斧でレバノンの森の木々を
切り倒すように、敵をなで切りにするのです。