11-2 そこがマルタと呼ばれる島であることは、すぐにわかりました。島民はとても親切で、雨と寒さでぶるぶる震えていた私たちを暖めようと、浜辺でたき火をしてくれました。
3 パウロが一かかえの木切れをたばねて火にくべると、熱気でまむしがはい出し、手に巻きつきました。 4 島の人たちは、まむしがぶらさがっているのを見て、「きっと人殺しなんだよ。海からは助かっても、正義の女神がお見のがしにはならないんだ」と、ひそひそささやき合いました。
5 ところがパウロは、平気な顔でまむしを火の中に払い落とし、ぴんぴんしています。 6 人々は、今にもはれ上がるか、突然倒れて死ぬのではないかと、息をひそめていました。しかし、いくらたっても、いっこうに何も起こりません。今度は、人々はパウロを神だと考えるようになりました。
7 この浜辺の近くに、島の首長ポプリオの領地がありました。首長は私たちを招き、三日間も親切にもてなしてくれました。 8 ところが、ポプリオの父が高熱と赤痢で苦しんでいるというので、パウロが行って、彼のために祈り、手を置いて治してやりました。 9 これを聞くと、島中の病人がぞくぞくと詰めかけ、みんな治してもらいました。 10 それで彼らは、私たちを非常に尊敬し、また出帆の時には、旅に必要なあらゆる品物を、船に積み込んでくれました。
11 難破してから三か月後、今度は、この島で越冬していた、アレキサンドリヤの「ふたごの兄弟号」という船に乗り込むことになりました。 12 最初の寄港地はシラクサで、三日間停泊し、 13 そこからずっと遠回りしてレギオンに行きました。一日すると南風が吹き始めたので、翌日には、順調にポテオリまで進むことができました。 14 そこで数名のクリスチャンに出会い、勧められるままに七日間世話になってから、ローマに向かいました。
15 私たちのことを聞いて、ローマのクリスチャンたちは、わざわざ、アピア街道のポロまで迎えに来てくれました。トレス・タベルネという所で落ち合う人たちもいました。パウロがこの人たちに会えたことを神に感謝し、勇気づけられたことは言うまでもありません。
ついにローマに
16 ローマに着くと、パウロは、兵士の監視のもとではありましたが、好きな所に住んでもよいことになりました。 17 到着して三日後には、パウロは地元のユダヤ人の指導者たちを呼び集め、話をしました。「皆さん。私はだれに危害を加えたわけでもなく、先祖の慣習を破った覚えもないのに、エルサレムでユダヤ人につかまり、訴えられて、ローマ政府の手に渡されました。 18 取り調べの結果、いったんは釈放と決まりました。ユダヤ人の指導者たちが主張するような、死刑にあたる罪は認められなかったからです。 19 ところが、ユダヤ人がこの決定に異議を申し立てたのです。同胞を訴えるつもりは少しもありませんが、やむをえずカイザルに上訴しました。 20 今日、皆さん方をお招きしたのは、お近づきになりたかったからです。また、私が捕らわれの身であるのは、メシヤ(救い主)が来られたと信じているためだと、わかっていただきたかったからです。」
21 ユダヤ人たちは答えました。「私たちは、あなたのことは何も聞いていません。ユダヤから手紙も来ていませんし、エルサレムから来た人たちからも、そのような報告は受けていません。 22 私たちは、あなたの信じていることを、あなたの口からお聞きしたいのです。クリスチャンについて知っていることと言えば、彼らが至る所で非難の的だということだけなのです。」
23 彼らはこうして日を決め、さらに大ぜいでパウロの家に来ました。パウロは彼らに神の国のことを語り、またモーセの律法から預言者の書に至るまで、聖書のありとあらゆる箇所を使って、イエスのことを教えました。彼の話は、朝から夕方まで続きました。
24 信じる人もいれば、信じない人もいました。 25 しかし、さまざまなことを言い合いながら去る彼らの耳には、いつまでも、パウロの最後のことばが響いていました。「聖霊が預言者イザヤを通してお語りになったことは正しかったのです。
26 『ユダヤ人に告げよ。
「あなたがたは聞くには聞くが理解しない。
見るには見るが認めない。
27 心は肥えて鈍くなり、
耳も遠く、目も閉じられている。
見もせず、聞きもせず、理解もしない。
わたしに立ち返って、いやされようともしない。」』(イザヤ6・9-10)
28-29 だから、よく覚えておきなさい。神のこの救いは、外国人に与えられました。彼らはこの救いを受け入れるでしょう。」
30 パウロはそれからまる二年の間、借家に住み、訪れる人たちを歓迎し、 31 大胆に神の国と主イエス・キリストのことを語りました。それを妨げる者はだれもいませんでした。